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2007年06月09日
●第1080話 『文教に随わず』
文字や言葉は“葛藤(つたかずら+ふじ)”と表現されることがある。理由は“本質という根っ子”が幹や枝に撒きつく蔦を伴って成長するにつれ、複雑に絡み合い、何処が本やら先やら解らなくなるように、悩む必要も無いことに悩むことになるからだろう。正に“葛藤(カットウ)”が起きるのである。
熱海の旅館組合の会長から聞いた話ですが、“とある温泉旅館”の実話だそうです。サービスと温泉と料理が素晴らしい、という噂が噂を呼んで人気が上がり、連日満室が続くので銀行から借金をして、本館に別館を付帯させ更に本館も別館も増築・改築を続けた結果、歩く距離が多すぎる旅館となり、客は言うに及ばず仲居さんすら館内で迷子になる始末となったそうです。そして、客は徐々に減っていったようです。笑い話のようですが、「旅館の使命とは何か」が途中から忘れられ、既成事実がエスカレートしたのでしょう。この話から学ぶことは多いですね。なお、旅館の名前を『葛藤荘』と改名することを奨めたいくらいですね。
さて、現代は“二者択一”、サロー曰くのゼロサム時代(誰かが得をすれば誰かが損をする)と言われています。AかBか、勝つか負けるか、有るか無いかということである。
また、シェイクスピアの「ハムレット」の中の名台詞「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」という西洋人の発想は、「生き死には自然の計らい」という東洋人の発想とは異なり、「生命や行動を支配するのは人間だ」という生命に対する“思い上がり”が見え隠れします。
更に、西洋人は、特に産業革命以後、自然とは“征服”の対象である、と考えています。
一方、僅かな数になってしまったかもしれませんが、“西洋文明を盲従しない独立心のある東洋人は“万物共生”という人間も自然の一部として共に生きています。 『共生と征服』、この違いは大きいのです。皆さんは、完全に勝つ、完全に負ける、完全に正しい、完全に間違っているという事実を知っていますか?常識的に言えば“殺人”は完全に間違っていますか?それでは正当な防衛により相手を死に至らしめた場合や国家権力による死刑は“殺人”ではないということになります。
さて、勝ち負けはどうでしょう。野球でもテニスでもゴルフでも、ルールを前提として勝ち負けを決めています。言い換えれば、ルールが変われば勝敗は逆転します。それでも完全と言えますか。全ては“相対的”なのです。本多勝一の『殺す側の論理』『殺される側の論理』を読んだことはありませんか。二元論(二項対立論)、つまり『有る』『無い』でも良いし、上と下、右と左、ゼロと一でも良いでしょうが、円を描いてみると、二元論者は“内か外か”を考え、一元論者は“線を観て“始まりも無く終わりも無い”と考えます。貴方は、どちらですか?何れにしろ、日常生活では多きな問題にはなりません。しかし、事、価値判断となると180度の違いが現れます。例えば対立が起きた場合、二元論者は裁判での白黒を望み、勝訴に向かいあらゆる策を講じます。一方、一元論者は、良し悪しは絶対的では無く、対立は堂々巡り(始まれば終わりは無い)になるので、自分も相手も満足ではないだろうが、不満とまでは言えない条件を考え“和解”しようとします。結果、二元論者同士ないし原告が二元論者で、被告が一元論者の場合に泥沼の争いが始まります。なお一元論者同士、原告側が一元論者で被告相当側が二元論者の場合には裁判になりません。前出の組み合わせによるトラブルで裁判が行なわれるのですから、当然に『勝訴と敗訴』が自分を完全な人間と勘違いした裁判官という不完全な人間により、白黒が決断された結果、勝った側は驕り、負けた側は恨みを残し、双方に問題を残こすことになります。一方後者の円に線に注目する一元論者は、勝ち負けを判断せず、双方が満足とは言えないが不満とまでは言えないという中庸を模索し「雨降って地固まる」という結果を模索します。これらの違いは『論理思考と情緒感覚』と言うことが出来ます。論理は“頭”、情緒は“心”です。勿論、真実は洋の東西を問わず『心頭は一如』です。それでも二元論者は“心と頭”、“心と体”を別の論理で考えます。霊魂だ魂だ、天国だ地獄だ、極楽浄土だ無限地獄のような人間が考えた二項対立、物理的には無いが心理的には有る”の真実であるにも関わらず、都合よく使い分けます。確かに二元論の考え方は単純な頭脳には便利なのですが、『限定的な合理性』しか持ちません。つまり二元論は、それが架空であれ実体であれ、『公正』には“基準”を必要とします。つまり、“前提”という概念が必要なのです。
一方、一元論は“無(有無の無ではなく、有無が無いの“無”)”という発想から、公平、つまり無差別、無分別を重視します。簡単に言えば“王様”と“乞食”に本質的な違いは無く、人間としての価値は『平等』とみます。これらの違いは、記憶に新しいマリーアントワネットでも連想してください。時代も価値観も諸行無常。昨日は天下人、今日は断頭台。革命前後でもマリーアントワネットという人間は変わりませんが、回りが変わったために“生死”が逆転します。一元論はヒエラルキーを否定し皆平等に考えるので、例えば釈宗演老師の弟子の夏目漱石が学んだ福沢諭吉は「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」を信条にしていましたし、勝海舟や山岡鉄舟らの西郷隆盛との交渉による江戸城無血開城などを参考にしても解るでしょう。現代風に言えば、『六本木ヒルズと断ボールハウス』か、『皆仲良く長屋暮らし』のような違いです。
さて、一般に言われる頭の良い人は多くの場合は前者、二元論者です。ところが、今日のニュースからも解るだろうが、頭が良い人が必ずしも正しい訳ではなく、幸せ(大安心)である続けることはないのです。解りますか?。つまり、論理は無限に飛躍しつつ拡散し本質という“円の中心”に向わず、枝葉末節である“円の外”に向うのです。ですから“競争”は永遠、となるのです。
一方、長屋暮らしであっても“心豊かな人”は、足るを知っていますから、必ず幸せです。現状に感謝し、現状を大事にしているのが一元論者の幸せなのですから、一生幸せなんです。勘違いしないで下さいね。一元論者は、現状は常に変化していることとして理解していますから、保守的ではなく融通無碍、自由自在なのです。
さて、長くなったので終わりにしますが、表題の『文教に従わず』というのは、外から強制された考えに服従せず、己の感じている正しい道を何があろうと兀兀と進むと考えて良いでしょう。つまり、泥棒の被害にあえば、「罪を作らせたのは自分が悪い」と考えつつも、二度と罪を犯させないために取られた物を取り返すのではなく、必要な行動を起こすという感じです。因みに、二元論者は、事の背景などに関係なく、奪った側が加害者、奪われた側が被害者で、理由に関係なく白黒を着けて、奪われた物以上を取り返そうとします。
さて、諸君、君達の“論”はどちらかな?。どちらとも取らないことについては如何に思うかな?
一日一生 慧智(070609)
『願わくは、この功徳を以って普く一切に及ぼし、我らと衆生と皆ともに、仏道を成ぜんことを』
投稿者 echi : 2007年06月09日 02:32
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