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2007年03月04日
●可惜一杯茶(惜しむべし一杯の茶)
一昨年、銀座で拙僧の“手慰み”の展示会を開いて頂き、沢山の方に見ていただいた。墨蹟だとか作品などとは程遠い、本物の“手慰み”なのだが、先ほどファイル探しをしているとふとしたタイミングの悪戯からその画像ファイルに出くわした。この写真である。誰が撮ってくれたのか、誰も居ない開館前の手慰みの写真に眼を奪われていると、ふと、五燈会元にある投子和尚(とうすおしょう)の行と我が師匠と拙僧の遣り取りが思い出された。
「森羅万象は全て這裏に在り」と投子和尚は弟子に茶を出した。すると弟子は、この茶を飲めば境涯の一つも言わなければならないと舞い上がり、咄嗟にその茶碗を跳ね飛ばして「森羅万象、甚麼処にかある」と和尚に迫ると、和尚は「可惜一杯茶」と静かに応えた。
師匠と弟子とは24時間365日真剣勝負。写真の中に写っていた一枚、「円相」は師匠との思い出であった。師匠「何を書いたか」と、14歳の拙僧、悪戯に坊さんの絵を書き始めたそのときで、未だ頭の部分である○しか書いていなかった事をよい事に、「円相ですと言うつもりが瞬間的に言い換えて」、「森羅万象です」と。すると、師匠は即座に「良く燃えるから焚付けに使いなさい」と。そして、薬石の為に湯を沸かす時、それを竈にくべてマッチで火をつけた。確かに良く燃えた。火を見ていると『力』の意味が見えた。どんな物もどんな人も分相応の役割があり、役割が終わると役割が変わる。それが『生死(しょうじ)』であり、山川草木悉皆成仏なのだと気付いた。一休和尚なら「円相は煙相だな」とでも和ましてくれるだろうが、暗い土間で一人きりの拙僧には煙が目にしみて涙が頬を伝うだけだった。
一日一生 慧智(070304)
投稿者 echi : 2007年03月04日 15:15
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