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2005年03月08日

野狐禅和尚のお応えします『質問:上司や経営者にカウンセラーの技術を持たせたいが、どうすれば良いか?』 №690

 最近、注文の多いレストランの如く、小生への質問が多い。実に個人的な内容は質問者のみに返信しているが、より多くの人に知ってもらいたい内容は、ここで応えるように心がけている。しかし、小生は釈尊ではないので、全ての質問に応え切れているかは甚だ疑問ではあるが、質問に対し無心に応えてはいるつもりなので、己の思いを纏める参考にはしてほしい。さて、今日の質問は社員の心の状態を案ずる心優しい経営者からの質問である。「最近、社員の何人かがメニュエル症候群や鬱症状で医者に通っていると聞いたので、部下を持つ社員には「カウンセリング」の勉強をするように指示しようと思うが、どんな勉強をさせれば良いか」というものである。
■この質問に対し、私は『お止めなさい』と申し上げたい。理由は以下の通りである。
◆理由:厚生労働省から心因性の病で休職している労働者は大企業で0,5%、中小企業で0,8%という数字が発表されている。人数で言えば47万人である。これは、健康保険にナイナスインパクト、企業には賃金の過払いが生じ、日本全体では1,5兆円の損害となる。勿論、医療機関は収入となるので、GDPレベルで判断すれば1兆円のマイナスとなる。これらに公衆医学医学の論理を加えて判断すると、心因性の疾患予備軍は500万人となり、労働者の10人に一人は、近い将来には通院する可能性がある。言い換えれば、国家と産業の潜在リスクなのだ。さらに、興味深い数字がある。昨年の自殺者は34427人。分類は、病いによる苦痛を原因とした者は14500人(私もこの数字に入っていたかもしれないが、悔い留まったている)、失業や倒産等の経済的な苦痛を原因とした者が8900人。3万人を超えようになり今回の最高数に達するようになったのは98年の「銀行の貸し渋り」が行われた年からである。「お金があれば死を選ぶことはなかったろうに…」という軽率な風評が流れて、単純な連中は『金が家族より、社員より、況や国家や郷土より大事』ということが強まった。実は金が問題なのではなく『金に依存する弱い心』であり経済問題ではなく『教育問題』なのだ。ところが、近年は経済苦より『心の病』が自殺の原因の主流になっている。何故だろう。だから、上司にはカウンセラーの勉強をさせる、というのも危うく肯いてしまいそうになる。しかし、それは絶対に止めるべきで、企業は『風土改革』を先行すべきだろう。
社員の『健康』は、常識外に過剰でない限り、労働時間や環境の問題ではなく、一人一人の社員の“働き方”の問題である。言い換えれば“やりがい”と“何でも話し合える企業風土”が大事なのである。人間は、それ程“やわ”ではない。1日12時間、300日働いたとしても、心身とも健康でイキイキしている社員は山ほどいる。その秘訣をインタビューした経験があるが、ヒアリングした全ての共通する話もあれば、何組かにグループ分けした方が良い話もあった。勿論、経営者としては、従業員を安全で健康な環境のもとで働かせるという安全配慮義務、健康配慮義務の認識は前提である。社員は“奴隷”ではないし経営者は“君主”ではない。前にも書いたが“経営とは、営みを経て目的・目標を達成させることである。言い換えれば、利害関係人の全てに対し奉仕するのが経営者の役割であり、労働者に甘く、株主にキツイとか、納税をしないとかは経営者失格である。勿論、納税を“誰に委ねるか”は経営者の裁量、戦略判断である。
さて、ここいらで“質問”に対し“反対”を唱えた具体的な理由を述べよう。
先ずは、病人や半病人を作り出す原因を潰しましょう。つまり、『企業組織』の問題として取組むべきで、個人と組織がWIN‐WINの関係構築をしましょう。つまり、個人と組織で目的を共有し、一人一人の目標達成を組織成員全員で助け合える構造と“その価値”を利害関係人の全てに共有させましょう。これは、『従業員満足の高い職場においてはストレス症候群にある患者が少ない』という事実があるからです。言い換えれば、一人一人のストレスマネージメントに配慮した『風土(文化)』を創造することです。
 次に、上司をカウンセラーにしない方が良いという背景には、『利害関係が構造化しているヒエラルキー社会では、上司は部下のカウンセリングは出来ないからである。言いたい事が言えない。上司は上司であるが部下でもあるという階級構造では、上司が部下の心身の健康に気を配るのは当然だが、『心因性の疾患の原因の多くは“上司”だからである。
 ですから、社員のカウンセリングは利害関係に無い“社外”の専門家が宜しい。もちろん、“偽”は困る。本物か偽物かは簡単にチェックできるので覚えておいて欲しい。先ず『社員は、人間は、部下は、上司は・・・』というように個性があり目的・目標が異なる社員を抽象化する専門家は“似非”と考えて間違いない。
少々脱線したが、社員一人一人は、異なる個性があり、其々に強味・弱味がある。言い換えれば、それを活かす仕組みが重要であり、企業が選択枝を用意し、社員に選択権を与えるのがベストだが、社員の多くは自分の強味・弱味に気付いていない場合が多く、先ずは、“それ”を気が付く事が出来るようになる“教育”が必要だろう。人と仕事のベストマッチングは、生甲斐と生産性を向上させ、個人にも組織にも有利に働くのはことを思い出して欲しい。具体的な指示が必要な個性もあれば、目的や目標を与えるが方法については自分で考えたい個性もある。とにかく、組織は個性を殺させて生産性を下げるのではなく、個性を活かして生産性を上げなければ、何れに対する“貢献”も出来ないのだ。小さな会社であれば毎日が教育の機会ではあるが、教育すべき経営者に教育者としての能力が無ければ、欲深な社員の思いのままになる組織が出来上がり、遠く無い将来には崩壊し、最終的に悪は滅びるとしても、その前に善が崩壊する。
最後に付け加えるが、一過性のニュースに対し、流行に乗るような判断をする経営者こそ問題であり、上司をカウンセラーにしようなど言う前に『風土改革』と『経営者自信のレベルアップ』をすべきだろう。理想は『一人が皆の為に、皆が一人の為に働ける補完組織であり、一人一人の個性・能力を活かして採用・教育・配置・評価・処遇し、目を共有し、理念を枠組みとして、全員一丸となれる生産性の高い編成を行ない、利害関係人全ての満足度を上げられる組織』の構築が経営者の仕事だろう。
慧智(050308)

投稿者 echi : 2005年03月08日 16:55

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